サステナビリティ経営(マテリアリティとSDGs)

サステナビリティ経営体制

当社グループは、サステナビリティ経営にとって重要な15のマテリアリティを特定し、4つのテーマ「ステークホルダーとの信頼醸成」「事業を通じた社会課題の解決」「自然共生社会の実現」「人財の活躍・人権の尊重」に区分しています。マテリアリティに関する取り組みは、ありたい姿とKPIを定めて進めており、各重要課題は個別に毎週開かれる戦略会議で適宜議論を行い、サステナビリティ推進会議で統括審議し、特に重要な課題は取締役会に諮っています。その進捗を年1回発行されるサステナビリティデータブックおよび当社WEBサイトで報告しています。マテリアリティの中でも最重要課題が「気候変動の緩和および適応」であり、長期目標「PACIFIC環境チャレンジ2050」を定めて、グループ全体で取り組んでいます。また、マテリアリティの4つの柱の1つ「人財の活躍・人権の尊重」については、5つのマテリアリティすべてが当社のパーパスと結び付く人財戦略と関連しており、人財戦略は取締役を含む議論のうえ策定を行っています。

マテリアリティとSDGs

サステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)

太平洋工業グループは、企業としての価値観やビジョンを実現し、SDGs(持続可能な開発目標)を達成するため、2020年に2030年を目安としたサステナビリティに関する当社グループの重要課題(マテリアリティ)を抽出し、4つの柱となるテーマと、15のマテリアリティ、注力するSDGsテーマを特定しました。

2025年には、環境変化やグローバルで進むサステナビリティ開示基準の要請などを踏まえ、マテリアリティを改定しました。引き続き、これらのマテリアリティをベースに事業活動に統合し具体的な活動に落とし込むことで、中長期にわたっての競争力を磨き、SDGsの達成に全社で取り組み、将来にわたっての「存在価値」を高めていきます。

1.ステークホルダーとの信頼醸成

  • 企業倫理・コンプライアンス
  • 責任ある調達
  • 顧客満足度の向上
  • 地域社会の発展
特に関連するSDGs
  • 目標4 質の高い教育をみんなに
  • 目標8 働きがいも経済成長も
  • 目標11 住み続けられるまちづくりを
  • 目標12 つくる責任 つかう責任
  • 目標13 気候変動に具体的な対策を
  • 目標16 平和と公正をすべての人に
  • 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

2.事業を通じた社会課題の解決

  • 持続可能なモビリティ社会と豊かな暮らしへの貢献
  • モビリティの安全性向上
  • 環境配慮製品の開発
特に関連するSDGs
  • 目標3 すべての人に健康と福祉を
  • 目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 目標11 住み続けられるまちづくりを
  • 目標12 つくる責任 つかう責任
  • 目標13 気候変動に具体的な対策を
  • 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

3.自然共生社会の実現

  • 気候変動の緩和および適応
  • 持続可能な資源の利用
  • 水・自然の保全
特に関連するSDGs
  • 目標6 安全な水とトイレを世界中に
  • 目標7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 目標12 つくる責任 つかう責任
  • 目標13 気候変動に具体的な対策を
  • 目標15 陸の豊かさも守ろう
  • 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

4.人財の活躍・人権の尊重

  • 従業員エンゲージメント
  • 安心して活躍できる職場づくり
  • 従業員の安全と健康
  • 人財育成と挑戦できる風土の醸成
  • ダイバーシティ&インクルージョン
特に関連するSDGs
  • 目標4 質の高い教育をみんなに
  • 目標5 ジェンダー平等を実現しよう
  • 目標8 働きがいも経済成長も
  • 目標10 人や国の不公平をなくそう
  • 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

5年ぶりの改定作業では、経営企画、環境、人事、総務、調達でのプロジェクトチームで検討を重ね、事業部門とも意見交換し、ステークホルダーとのエンゲージメントを踏まえ、適宜取締役に諮りながら特定を実施しました。結果として、前回特定されたものから大きな変更はありませんでしたが、以下が主な変更点と改定の「思い」となります。

1.4つの柱についての表現を改定

  • これまで「製品を通じた社会・顧客課題の解決」としていましたが、「製品」ではなく、「事業」全体で「顧客を含む社会」に向けて価値をつくっていく思いを、シンプルに「事業を通じた社会課題の解決」として表現。
  • ネイチャーポジティブという概念も広がりを見せるなか、これまでの「環境負荷を極小化」する視点だけではなく、「自然と共生する社会」を包摂的に実現していくという意志を「自然共生社会の実現」にこめました。
  • 「人権の尊重」は、人に関わる広範なテーマに関係する重要なテーマであることから、これまでの15のマテリアリティの1つでしたが、今回1つ上位のテーマとし、「人財の活躍・人権の尊重」としました。

2.「水資源の保全」を「水・自然の保全」に

水資源は、自然資本や生物多様性との関わりが大きく、それらを一体的に進めるべきであるという課題意識を反映し、「水・自然の保全」としました。

3.人財に関するマテリアリティの変更

  • 当社のパーパス実現の要であり、経営目標でもある「従業員エンゲージメント」を独立したマテリアリティとしました。
  • 「安定した雇用と働きやすい職場」を、全社で取り組む心理的安全性の確保も含めたより伝わりやすい表現とするため、「安心して活躍できる職場づくり」としました。

マテリアリティ特定プロセス

1.前提条件の設定

ISSBやSSBJ、TCFDなどで求められる社会や環境が当社の企業価値・財務に与える影響(リスクと機会)の観点と、GRIなどに基づき、これまでも取り組み報告してきた当社事業が社会・環境に与える影響(インパクト)の観点は大きく関連する事から、それらを包摂的に把握し、効率的に取り組めるダブルマテリアリティの考え方を採用しました。

  • ISSB:国際サステナビリティ基準審議会
  • SSBJ:サステナビリティ基準委員会
  • TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース
  • GRI:グローバル・レポーティング・イニシアティブ

前提条件

  • サステナビリティに関するテーマ
  • 概ね2035年までの10年を念頭に置く
  • グローバル及びバリューチェーンでの重要性を含め検討

2.重要度分析

当社事業が、社会・環境に与える影響(インパクト)と、社会・環境が当社の企業価値・財務に与える影響(リスク・機会)の2つの観点で、ESRSのテーマ及び当社独自の考えを踏まえた項目でバリューチェーンでの影響度を分析しました。

その際、気候変動のリスクと機会はTCFD、環境面のインパクト、リスクと機会はTNFDを参考に、簡易的な自然資本評価を実施、また社会へのインパクトは人権リスク評価を踏まえ、統合的に評価を行いました。

  • ESRS:欧州サステナビリティ報告基準。ダブルマテリアリティでサステナビリティ課題を報告する基準。
  • TNFD:自然関連財務情報開示タスクフォース
マテリアリアティ特定方法の考え方
  • ENCORE…事業の自然資本への依存・影響を分析するオンラインツール
  • IBAT…生物多様性に関する重要地域を特定する為のオンラインツール

3.マテリアリティ評価の結果

マテリアリティは、テーマ別に影響度と可能性をA~Eで評価し、A5点~E1点とし、インパクト面とリスク・機会面でそれぞれ影響度と可能性に分けて評価を行い、合計が15点以上になったものをマテリアリティとしました。ただし、水の利用・汚染防止・生物多様性・化学物質に関しては、個別では15点以下ですが、相互に関連し合い重要性も高まっていると認識しており、「水・自然の保全」としてマテリアリティとしています。

4.議論と再検討

各種グローバル基準、国内外の顧客からの要請、自動車部品メーカーのマテリアリティ、および技術開発部門との意見交換などを踏まえてマテリアリティを多角的に検証。その結果、マテリアリティ候補で、基準・顧客要請、他社比較で、足りないと思われるテーマはありませんでした。当社の独自性の高いテーマが複数ありますが、いずれも当社にとって重要と考えられると結論づけました。

5.有識者レビュー

サステナビリティ経営に関する高い知見と、マテリアリティ評価助言に関する多くの実績、当社の前回のマテリアリティ評価への第三者意見、当社小川信也会長(当時社長)との対談などの当社への理解の深さなどから、政策研究大学院教授の竹ケ原啓介氏に、当社マテリアリティを評価いただきました。

第三者意見

この数年、非財務情報とその開示に関して、多くの変化がありました。ISSBによってシングルマテリアリティ軸の標準化が進む一方、企業によっては、欧州のESRSに象徴される、マルチステークホルダー視点のダブルマテリアリティへの対応が並行して必要になりました。また、自然資本に関連した財務情報開示フレームワークであるTNFDが登場し、バリューチェーン全体にかかる自然資本への依存度と影響を分析することが要請されています。更に、グローバル化によるサプライチェーンの複雑化を背景に、人権問題への関心が一段と高まり、様々な国際ルールへの配慮と対応も待ったなしになりました。企業の価値創造ストーリーと、これを支えるマテリアリティ分析も、一連の変化を受けて、短期間のうちに陳腐化するリスクがあります。

こうした外部環境に鑑みて、中長期経営構想「Beyond the OCEAN」、新中期経営計画「NEXUS-26」を踏まえた今回の貴社マテリアリティの見直しは、まことに時宜を得た取り組みだと思います。内外の多様なファクターをもれなく織り込み、丁寧に分析する特定プロセスは、特筆すべき貴社の特徴ですが、今回もそれが遺憾なく発揮され、ダブルマテリアリティの視点、自然資本の分析、人権DDなど新たな要素が取り込まれました。欧州の規制動向が不透明ななか、これに先んじる形でダブルマテリアリティを継続して取り入れたことや、人権DDについてもステークホルダーエンゲージメントを実施するなど、一貫した姿勢からは、社会からの期待に応えつつ企業価値創造を追求する貴社の統合思考がよく伝わってきます。また、このプロセスに社内の多くの部署が参加した点も強調すべき成果だと思います。

なにより印象的なのは、大きな変化を踏まえた見直しを行ったにも関わらず、新たに特定されたマテリアリティが前回のものと連続性を保っていることです。これは、前回のマテリアリティ分析が貴社の事業特性にフィットした優れたものだった証左といえましょう。それだけに、新旧マテリアリティを見比べると、一見しただけでは、大きな差異がないかのように見られてしまうことが懸念されます。この間に行われた詳細な特定プロセスの内容と、そこで得られた知見(貴社にとっての貴重な無形資産です)を、何らかの形で詳しく開示していくことで、貴社の強みを一層訴求することを期待します。

政策研究大学院大学 教授
竹ケ原 啓介氏

6.承認・決定

戦略会議での議論を経て取締役会にて最終承認。社内浸透を進めKPIを定めてPDCAをまわしていきます。