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鍛圧製品

高品質と低コストを両立する鍛圧製品と、未来に向けた技術展開

鍛圧技術部
M.T

高い精度が求められる鍛圧製品

自動車のAT内部には、遊星歯車機構という複雑に歯車が噛み合う場所があります。当社では、その周辺にあるハブやキャリヤ、カバーなどと呼ばれるさまざまな鍛圧製品を製造しています。自動車が完成した際に外部からは見えない部品ですが、スムーズな走行に直結する重要な部品であるが故に、製品には1/1000mmレベルのかなり高い精度が求められます。確かな品質を担保しつつ、いかに生産能力を上げられるか。これは鍛圧製品の製造で常に隣り合う課題です。

※AT(Automatic Transmission)…自動車の自動変速装置

厚板材料の冷間鍛造技術

当社における鍛圧製品の製造で特徴的なのは、厚さが6~12mmほどの厚板と呼ばれる材料を冷間鍛造により加工できる点です。厚板の材料ははじめコイル状になっており、それを伸ばして帯状にし、金型でプレスして一つの製品を作っていきます。冷間鍛造は、材料に熱を加えず常温のまま、圧縮して増肉させたり、曲げたり、抜いたりなどの加工を行う製造方法です。熱を加えれば材料が柔らかくなり加工しやすくなりますが、常温で加工する場合は硬い分、成形精度が高まります。また、削り出して成形する加工法と比べて材料の利用率が上がるため、材料コストの低減、廃棄物の削減などにつながることも利点の一つです。プレス機もかなり高精度で力のあるものを導入しており、プレスと冷間鍛造の複合形成により、低コスト・高機能・高精度な部品づくりを可能にしています。

増肉断面

増肉断面

増厚解析

歯型製品のワンショットプレスによる全自動ライン

厚板材料以外の鍛圧製品としては、歯型製品も数多く手がけています。ドーナツ材といわれる円盤型の材料をプレスし、複雑な形状を成形していきます。当社ではそれを、ワンショットプレスによる全自動ラインで実現しています。プレス成形といえば、まず一つの金型で成形し、横に流れてまた次工程でさらにプレスし、段階的に製品の完成に近づくイメージですが、当社で立ち上げたワンショットプレスのラインは、何段階もの金型を一連の動作の中に仕込み、最初のドーナツ材からワンストロークで歯型製品の主要な形を作り上げることができます。さらに完成までには歯型を作るだけではなく、孔あけやトリム(端切り)、削り、バリ取りなどの複数の工程が必要です。そのすべてを一貫してつなげた大型ラインは9秒に1個、完成品が出てくるという生産スピードで、月産13万台という物量をこなしています。

歯型断面

歯型製品解析

技術者としてのこだわり、思い

今、自動車業界は変革期にあります。トランスミッションに関しては、従来のメカ式といわれる部品が噛み合って変速していくものに比べ、ハイブリッドや電気自動車などのモーターで動力を制御して変速させる場合、使われる部品点数が大幅に減ります。そこで当社でも新たに、モーターに使われるステンレス製品の製造ラインを立ち上げました。ステンレス材のプレス製品ができる事業者はまだ少ないと感じています。これまで培った技術を活かし、次世代の自動車に通用する新たな製品にいち早く着手できるというのは、太平洋工業の一つの強みだと感じています。
これまで当社ではATに関連する製品を多く手がけてきました。そこで培った技術や製品をもっと広く展開していきたいと思っています。例えば、バッテリー関係の構造部分。強度が必要なところや、差厚があるような部品などは、特に当社の技術が活かせるはずです。うまく転用できれば、より広く使われる製品の開発につながります。常に、自社の技術に誇りを持って仕事をしていますが、探求心も忘れずに新しい領域にもどんどん踏み込んでいきたい。歩みを止めず、これからも選ばれ続けるメーカーにしていきたいです。