こだわりのものづくり 光輝フィルムインサート成形技術を応用した インジウムフィルム・アウトサイドドアハンドルの開発 上野 和重

  • 世界最軽量エンジンカバー
  • 高精度プレス技術
  • アルミ・ハイテンによる軽量化
  • 光輝フィルム インサート成形
  • 新タイプのTPMS送信機
  • 燃費向上 2槽式オイルパン
  • ポップアップフードヒンジ
  • プリウスの当社主要製品にみるものづくり

スマートエントリーシステムとは

自動車のドアハンドルには、ハンドルのロックスイッチに触るとスマートキーと呼応してドアをロックするタッチセンサーシステム(=スマートエントリーシステム)が多く採用されています。スマートエントリーシステムは、静電容量の変化を検知して開錠施錠するため、導電性があるめっき品のドアハンドルでは電波通信や静電容量の変化を検知できず、誤作動を起こす可能性が指摘されていました。

また、従来のドアハンドルは、スマートエントリーシステムの誤作動を防ぐため、表面のめっき幅を広く取れないといった意匠の制約があり、めっき意匠の幅を広げ、商品力を向上させることが課題となっていました。

インジウムフィルム・アウトサイドドアハンドルの開発

そこで、これらの課題をクリアするために当社が開発したのが、「インジウムフィルム・アウトサイドドアハンドル」です。金属めっきの代わりに、金属光沢感を持つ多層構造の「インジウムフィルム」を開発し、このフィルムをインサート成形※で樹脂と一体化させました。めっきに劣らぬ意匠性を保ちながら、電波透過性や静電容量変化に影響を受けないインジウムフィルムを使用することで、スマート機能とめっき調意匠の両立を実現させました。めっきレスを実現したことで、リサイクルが100%可能となり、更にインジェクション成形によるサイクルタイムの大幅削減、生産性向上によるエネルギー削減にも寄与しています。

※インサート成形技術
インサート成形とは、3次元形状に予備成形された光輝フィルム(金属蒸着)を金型にセットし、射出成形の樹脂と融着させることにより、深絞りフィルム一体製品を得る射出成形技術です。

このアウトサイドドアハンドルは、めっきの代替技術として、当社が従来からアルミホイールのセンターオーナメント等の自動車用外装部品に採用している光輝フィルムインサート成形技術を応用したものです。新たに開発したインジウムフィルムは、インジウム蒸着粒子が完全にフィルムを被膜しない海島構造を作ることで、めっき調意匠と電波透過性、絶縁性の両立を可能にしています。また、フィルムや製造工程に手を加え、映り込みなどでめっきに見劣りしない綺麗な外観に仕上げました。成形技術面では、フィルムの成形時に深く絞った部分で破れや透けなどの不具合が起きないよう、フィルムの構成や成形時の加熱と加圧のタイミングを工夫しました。また、フィルムのトリミングにはレーザー加工を使い、綺麗な意匠ラインと違和感の無い触感に仕上げました。

金属蒸着層の海島構造

金属蒸着層の海島構造
金属粒子が互いに独立した海島構造を形成しているため電気を通さない。

“超”モノづくり部品大賞「自動車部品賞」受賞

本製品は、モノづくり推進会議と日刊工業新聞社が共催する、2010年度“超”モノづくり部品大賞「自動車部品賞」を受賞するとともに、トヨタ自動車より「技術開発プロジェクト賞」を受賞する栄誉に輝きました。

“超”モノづくり部品大賞贈賞式

“超”モノづくり部品大賞贈賞式

“超”モノづくり部品大賞は、日本のモノづくりの競争力の源泉として重要な役割を占める部品や部材に焦点をあてた表彰制度で、2003年度から創設されたものです。当社の製品は、スマートエントリーシステムを実現できる一部品に過ぎませんが、まさに縁の下の力持ちとして、高い外観品質と信頼性を確立し、車の商品力の向上に寄与する技術が認められたことは、開発に携わった技術者としては大変名誉なことであり、大きな喜びとなりました。

技術者としてのこだわり、思い

スマート機能とめっき調意匠を両立させたドアハンドル部品という世界初の試みで、開発当初は要求されるスペック、非導電性メカニズム等わからないことだらけでした。量産化にあたり、フィルムの剥がれや加工工程でのブツ不良など次々と新たな問題が発生しましたが、フィルムの材料特性や加工法の原理原則をとことん追究し、真因を掴むことで対策に繋げることができました。

一方、光輝フィルムインサート成形は、形状制約やコスト等の課題があり、まだまだ発展途上の技術です。これらの課題を克服するためには、新しいアイデアとオリジナリティで、既存概念をブレイクスルーしなければなりません。生みの苦しみはありますが、課題を克服したときの達成感、これこそが技術者のやり甲斐だと思っています。フィルム技術を更に発展させ、顧客ニーズに応えながら、製品用途の拡大を図るためにも、失敗を恐れず日々チャレンジしていきたいと思います。

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