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トップ対談 未来に向けたものづくり、人づくりを進め、グローカルな融合経営へ 小川信也×浅井紀子氏浅井紀子プロフィール 中京大学経営学部大学院経営学研究科教授

東北工場を復興の拠点に

小川:浅井先生には、中部経済同友会ものづくり委員会で大変お世話になりました。2000年11月に当社の「ものづくり全社大会」でご講演いただき、現場でご指導をいただいて以来となりますね。当時、国内・海外の製造現場に積極的に足を運び、現地現物でものづくりの研究をされている先生から、技能の継承や国際移転等の人財育成、技術革新といった、ものづくりと人づくりの真髄をご指導いただきました。

浅井:あれから10年以上が経ちますね。私も久しぶりに大垣に来て、大変懐かしく思っています。太平洋工業の本社があるここ大垣市は、松尾芭蕉の『奥の細道』むすびの地としても有名な所ですね。私も、芭蕉が旅した東北地方を回りながら各地の工場を訪ね歩き、日本のものづくりを学んだことがあります。太平洋工業にも東北に工場があり、東北と大垣のご縁を感じています。東北工場は、東日本大震災を乗り越えて、新しい拠点として拡充を進められていますね。

東北工場
東北工場

浅井教授が東大垣工場を見学
浅井教授が東大垣工場を見学

小川:宮城県栗原市に東北工場を立ち上げた直後の大震災でしたが、幸い被害は軽微でした。それよりも、栗原市の震災対応力に心を打たれました。そして、真の企業市民としてこれまで以上に地域に根ざした事業活動を推進していきたいとの思いから、2012年1月に栗原市からお借りしていた土地・建物を購入しました。トヨタ自動車は、東北地方を中部、九州に続く国内第3の拠点として位置づけ、日本復興のシンボルにと、トヨタ自動車東日本を設立されました。私たちもお客様により近いところで部品を供給するとともに雇用創出を図るなど、地域に根ざした企業経営を通し、復興の一翼を担う決意です。

浅井:明日の希望につながる素晴らしい取り組みですね。先日、東大垣工場を見学させていただきましたが、生産技術と現場の知恵・技能が融合されていると感心しました。従業員の皆さんが、現場をもっともっとよくしようと熱い想いを抱いて改善に取り組んでいらっしゃる姿、安全や品質への緊張感も印象に残っています。

小川:東大垣工場は、トヨタ生産方式による改善を数年かけて進めてきた工場です。鉄パレットの大収容数をポリ容器などに小収容数化するとともに、リフトレスを実現し、売れた分だけ小刻みに生産する考え方を、工程スルーで実現するラインを構築しました。

浅井:設計の段階から部品の共通化を進めているそうですね。それによって治具の汎用化も可能となり、大きな改善が達成できたとお聞きしました。あらためて太平洋工業の皆様が、部門を超えて知恵を結集し、ものづくりを進化させていく底力を感じました。

小川:私たちがトヨタ生産方式を導入してから40年が経過しましたが、小さな取り組みを積み重ねた結果、着実に力をつけてきたと実感しています。設計・生産技術・製造・品質管理が一緒になって取り組むことで、確かなカイゼンがなされました。

中期経営計画の核となる5つの“シンカ”

5つのシンカ
5つのシンカ

浅井:太平洋工業は創業から80年を超えた伝統のある会社ですが、現在長期ビジョン「PACIFIC GLOCAL VISION 2020」を策定し、その通過点として中期経営計画「OCEAN-15」に取り組まれていますね。その中で、5つの“シンカ”を定めて事業構造の転換を推進されていますが、どのような課題に取り組まれているのでしょうか。

小川:5つの“シンカ”の1つは保有技術・技能・知見を深め世界品質を実現する“深化”です。2つめは環境技術も含め製品・工法の革新からなる“進化”。3つめは新製品・新技術の開発を推進し、新事業をおこす“新化”。4つめは財務強化、融合経営を推進し、サステナブル経営を追求する“真価”となっています。そして5つめは、コンプライアンスやリスクマネジメント、グローカル人財育成といった企業活動の基盤を構築し、ステークホルダーの皆様からの信頼と期待に応えるという“信加”です。この5つの“シンカ”を実効することが今後の課題と認識しています。お気づきのように、CSRと関わる多くの要素がこの中に統合されています。

浅井:事業戦略とCSRが不可分だということですね。2050年には人口が90億人を超えると言われており、エコノミー、エコロジー、エネルギーのベストなバランスを見出すためには、人類、地球、そして企業がサステナビリティをテーマに革新していくことが期待される時代となっているように思います。

フィルムを使ったセンターオーナメント
フィルムを使ったセンターオーナメント

燃費向上を図った2槽式オイルパン
燃費向上を図った2槽式オイルパン

小川:その通りです。エコロジーやエネルギーという点では、当社では環境目標を掲げて環境経営を行っていますが、エネルギー原単位低減の成果は見られるものの、CO2排出総量の削減はまだまだ大きな課題です。ただ、廃棄物は10年前の1/3にできており、VOC排出量削減も順調に進んでいます。また、環境製品開発も大きなテーマであり、最近では光輝フィルムを採用しためっきレスのドアハンドルやオーナメント、エンジンオイルの温度上昇を早め、燃費向上を図った二槽式オイルパンなどが評価されました。また、超ハイテン材を使用した冷間プレス加工の技術では、熱間プレス加工に比べ、コストを20%削減し、加工数を約8倍に高めています。

浅井:ものづくりに対する挑戦を続けているわけですね。サステナブルな社会に貢献しようという太平洋工業の意気込みに心を動かされます。企業価値を高める努力に期待しています。環境だけでなく、会社としていかに社会に認められるかも大切ですね。論語にも、政の要件として、「民の信なくんば立たず」、第一に信頼だと説いています。

小川:かつては利益を出せば良いというのが、企業への評価でした。現在はグローバルで事業を展開し、様々なステークホルダーとの連携が欠かせないものとなっています。ステークホルダーの中で最初に挙げられるのは従業員であり、当社が掲げる融合経営のキーポイントはまさにこの従業員です。

 
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