CSR・環境情報

「縁」つながりを大切にするダイバーシティ

小川:トヨタ生産方式では、「後工程はお客様」という言葉があります。これは、単にプレス工程から溶接工程へと部品を手渡していくことではなく、新車をお待ちのお客様に、良品をお届けするという想いを持って、仕事をしていくことと捉えています。太平洋工業の部品がついているクルマに皆さん乗っていただけるということが、私たちのものづくりに対する喜びにつながっています。こうした想いを従業員が自覚することで、より良い技術開発・ものづくりが生まれるのだと思います。

村上:「縁」という言葉があります。インドでは寝ている牛を見ると「これはお婆さんの生まれ変わりだな」「あれはお爺さんの生まれ変わりかな」と、そんな風にみているのです。生き物全て、動物も含めてみんながつながっているという「こころ」があるのです。見えないけれども見える、というより感じる。そういうことが「まほろば」であり、日本人が大切にしてきた「こころ」です。「縁」も同じ意味で、自分以外の人を大切にするということが、日本人の持っていた「こころ」ではないかなと思います。

小川:自分以外の人を大切にするのは、ダイバーシティそのものですね。女性や高齢者、障がい者、外国人の活用など、多様な人財の活用を進めていくことは、これからの企業の成長に関わる点で大変重要です。グローバル化が進み、多様な価値観を持った方々と一緒に仕事をすることがますます増えてきています。多様性を許容し、お互いが思いやりの「こころ」を持って、人と人とのつながりや縁を大切にする価値観を根付かせていくことが重要だと思います。

村上:我々僧侶の世界では、70歳は高齢者ではありません。私も昨年ようやく薬師寺の住職になったくらいですからね。文化、宗教や芸術では、本当に全身全霊で打ち込んでいける体力、気力、技術が充実していて、それを持ち続けることが大切です。仏教では、自分のことだけではなく人のために働く、利他行が一番中心となります。これができるようになって、ようやく一人前として認められるようになるのです。

CSRは「自他合一」の精神で

村上太胤師

小川:昨今注目されているCSRでも、社会のためになることが大切だと思います。企業として、単に儲ければいいというわけではなく、社会に適合しているか、社会の一員であるか、みんなのためになっているか、そういったことが求められています。ステークホルダーから信頼され、期待される企業となるよう、会社を良くしたいという経営の「想い」があるのです。活動メニューや体制だけ考えて実施する、義務や責任のようなものではありません。

村上:「自他合一」ですね。これは、相手とひとつになるという価値観です。社会のために会社の皆さんがやっておられることが、最終的に自分自身の喜びになり、つながりになっていくということです。そういう感謝の気持ちがあれば、社会のこと、毎日の仕事をしながら、その活動を通じて自身の喜びが感じられる世界がいっぱい出てきます。これは、融通無碍(ゆうずうむげ)につながっていく、日本人の「こころ」そのものなのですね。

小川:「里山の森づくり」など、CSR活動に参加した社員からは、「参加してよかった」、「家族と一緒に過ごせる時間が一つできた」などといった声が寄せられるのです。そうした活動が、自分の仕事に戻った時に、「やりがいをもってチャレンジした」、「新しい開発ができた」、「早く帰って家族と話そう」というような活力を生む原動力になっていると感じます。そうした従業員の思いや活動を、私たちがきちんと評価していくことで地域との融合もできていきます。

村上:そういう損得を超えたようなことで、みんなが一緒になって集うことが大事です。それで「こころ」がつながりますからね。無駄なものに投資する土壌がないと、文化は生まれてきません。やはり殿様がいた地域は、そのような集いを通じて固有の文化が育まれています。

小川:会社としては、株価や業績で評価されてしまうかもしれませんが、もっと視点を高くすると、100年企業に向けてあるべき姿をどう描くかという目に見えない縦糸、「こころ」を強くしていくためのプロセスが大切です。愛着をもって、「こころ」を大切にしながら進むことで、結果として品質・コストなどの評価につながっていくのだと思います。一歩ずつでも歯を食いしばって、目は笑いながら前に行きたいです。

村上:薬師寺では毎年お正月に「開運招福」と揮毫するのですが、「運」という字は運ぶということですから、じっとしていたのでは運は開けてこないのです。ものづくりというのも同じで、身体も口も心も動かしていく「業」から始まり、開運につなげていかなくてはならないですね。

小川:開運につなげていくためには、夢を描いて挑戦し、自ら未来を切り開いていく必要がありますね。100年企業に向けて、従業員が「こころ」をひとつにして、想いを込めて一生懸命活動していけば、きっと「開運招福」が訪れるのでしょう。今日は本当にありがとうございました。

小川 信也×村上太胤師

前のページへ
1 2