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トップ対談 価値創造の原理原則 太平洋工業株式会社 代表取締役社長 小川 信也×国立大学法人岐阜大学副学長 林 正子氏林 正子氏 プロフィール 国立大学法人岐阜大学副学長

「地域に生かされている」という意識

小川:当社には岐阜大学出身の社員が多数在籍しており、地元を代表する大学として、様々な形で大変お世話になっています。

林:小川社長さんには岐阜県の審議会や岐阜大学の経営協議会の委員として、いつも貴重なご意見をいただき、ありがとうございます。14年間にわたり、岐阜大学の地域交流協力会の会長も務めていただきましたね。

小川:地域交流協力会は、産学官連携のはしりで、産学官融合センターの先生方と知恵を絞り、オープンラボやポスター展示会で、企業の皆さんと先生方の交流の場づくりに努めました。次第に共同研究などの成果が出てきて、地場産業である金型について、金型創成技術研究センターをつくっていただきました。今夏、スマート金型研究施設ができたのもうれしかったです。林先生も、地域循環型女性研究者の育成・支援プログラムである「清流の国 輝くギフジョ支援プロジェクト」などで、素晴らしいご活躍ですね。

林:「清流の国 輝くギフジョ支援プロジェクト」は、岐阜大学、岐阜薬科大学、岐阜女子大学、アピ株式会社と共に、「岐阜県を中心とする地域内の女性研究者・女性技術者の流動性を高めつつ、安定した活躍の場を確保することで、女性による岐阜創生に繋げる」という事業目標を達成するために、様々な活動を行ってきました。参画している大学や企業がほぼ半径10キロ圏内にあり、月1回集まって、具体的な企画から実施に対してどのように連携を深めていけばよいかという相談を定期的に行えたことが良かったです。企業と課題を共有し、一緒に連携して進めていけるという実感を得ることができました。今後は、ワーク・ライフ・バランスや女性が継続して働ける制度を、企業と一緒に開発していきたいと考えています。太平洋工業にも女性技術者がいらっしゃいますね。

小川:はい、当社にも女性技術者として活躍してもらっている社員が数名います。デザインや設計の仕事でも、生産技術や製造の現場に積極的に関わっていく技術者ですから、男性と同じように現場で仕事をします。理系女子の採用面接では「爪の間に油が入ってもいいですか?」と質問します。女性ならではの発想も貴重であり、女性が活躍できる土台を提供していかないといけません。

林:面接の時にそのような質問をされるのは、そうした覚悟を持ってきて欲しいということですね。2018年2月に開催された「清流の国ぎふ女性の活躍推進サミット」では、小川社長さんに岐阜県経営者協会の会長というお立場で、女性活躍推進の宣言をしていただきましたが、今後は太平洋工業とも、女性活躍推進に向けた取り組みを一緒に行っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

小川:女性活躍やダイバーシティは、今後も積極的に取り組んでいきたいと思います。当社ではワーク・ライフ・バランスにも力を入れていて、「絆と成長」という言葉をスローガンに取り組んでいます。会社は社員の成長のために人財育成を行いますが、個々がレベルアップすれば生産性や業務品質が向上し、早く家に帰って家族とのコミュニケーションを深めることができます。休日は、趣味や自己研鑽、ボランティア活動やスポーツの指導者として、人生の充実感を得る人もいるでしょう。このようにして、職場の絆と家庭の絆が強くなることで会社が成長し、地域社会との絆も深まっていくことで、地域全体の発展に繋がると思うのです。

「お互い様」と言い合える会社

小川 信也

林:この対談の前に、多様な経験を持っている女性社員の皆さんとの座談会をセットしていただきました。太平洋工業では、社員と直属の上司が年に数回、面談をされているのですね。これはとても大事なことだと思います。社員の皆さんが各ライフステージでどのような局面を迎えているのか、そのような情報がしっかりと共有できているという、とてもよい雰囲気を感じることができました。

小川:上司との面談は、目標管理という形で実施しています。この半年間をどのような目標で仕事をするか、その相談をしているのです。もちろん、能力の査定という側面もありますが、どのようにして部下にモチベーションを与えるかということも、上司側のマネジメントとして重要なことであり、そのためのコミュニケーションの時間なのです。仕事以外でも、結婚・子育て・介護などの家庭環境の変化で苦労はないか、悩みはないかといった話ができれば、上司のアプローチの仕方が変わります。

林:そのようなプライベートな情報も、こうした機会を通じて相互に共有できているので、職場の中でお互いを理解しあう環境が自然と整っているのですね。座談会出席者には、複数回の育児休暇を取得した方もいらっしゃいました。しかも自然に取得できていたようで、各々の社員が、一人の人間として評価され、自然に幸せを追求する権利が与えられていることを感じました。さらに、社内結婚も多いそうですね。これも、会社の中の雰囲気がよい実証例だと思いました。

小川:女性活躍のための様々な制度は、法律で規定されていますが、私はやるべき課題の最低限が表現されているに過ぎないと思うのです。当社では、育児休暇取得率100パーセントですが、「育児休暇や時短勤務を小学生低学年まで対象となるようにして欲しい」といった社員の声に耳を傾け、制度の拡大を進めてきました。その際には、各職場でサポートやカバーができるのか、確認しました。高齢者雇用もそうですね。体力が落ちていく中で、今までの時間ではできない、もちろん残業もできない。そうした人を受け入れる職場をどのように作っていくのか。その環境を整え、ポリシーを策定するのは、経営の仕事です。

林:私は、中長期的な時間軸で見た時に、様々な働き方があっていいと思います。例えば育児休暇を取得しても、その後職場に復帰し、また活躍してもらう。これは社員本人にとっても会社にとっても大変よいことだと思います。独身の方や男性社員でも、自分磨きのための短期留学や資格取得のための休暇、介護休暇を取得することができる。つまり定年までの時間軸で見た時に、「お互い様」と言い合えるような組織をめざすべきだと思うのです。

小川:「お互い様」は大切ですね。それは、「これがやれるといいね」ということの交換だと思うのです。その根底には、互いにリスペクトするという感情や思想が流れている。勝手なことをやっているだけでは、「お互い様」にはならないですから。そしてリスペクトし合える関係になるためには、活発なコミュニケーションが必要です。

 
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