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トップ対談 未来に向かう心構え。 太平洋工業株式会社 代表取締役社長 小川 信也×サッカー元日本代表 FC岐阜監督 ラモス 瑠偉氏ラモス瑠偉氏 プロフィール FC岐阜監督

「楽しさ」こそがモチベーション

小川:中西先生は、地元大垣市の興文小・中学校の卒業生で私の大先輩にあたります。2010年に、興文小学校の「藩校創立170周年記念事業」の際、先生に記念講演をお願いしたのがご縁で、「文化勲章受章記念講演会・祝賀会」でもお目にかかりました。地元を愛し、子供たちに夢を与える貴重なお話と、科学技術に対する強い思いをお持ちで、ぜひ、当社のCSRレポートでも対談をさせていただきたいと思い、今回お招きいたしました。

中西:ありがとうございます。興文小学校の講演では、子供たちが非常に積極的で、質問が多くあったのを覚えています。

小川:今日は、対談の前に、プレス・溶接・樹脂加工の東大垣工場をご見学いただき、最近の技術開発についてもご覧いただきましたが、当社のものづくりへの率直な感想をお聞かせください。

中西:はい、こうしたモノづくり会社を見るのは数少なく、実際に拝見させていただきお話を伺うと、その技術開発の質の高さのみならずそこに至るまでのプロセスで、いかに効率性を高めるかなど、実によく工夫しておられると感じました。こうして世界と戦っておられるのかと大変感銘を受けました。

小川:先生の研究も、それこそ世界に名を轟かせていますが、何か共通点はあったでしょうか?

中西:私達の研究分野は医学、生命科学と違う分野ですが、自分たちで原理を見つけていく楽しさを持っているという点では共通点があると思います。工場見学と技術展示で説明してくださった社員の方々が、大きな技術開発の方向性を見据えつつ、それぞれの技術開発のステップでしっかりとした目的を持ち、新たな挑戦をしていることをすごく楽しそうに説明されていたのが印象的でした。私たちの学問分野でも、自然の摂理を理解するために自分たちで原理を見つけて新たな挑戦をして目的を達成していきます。世界で誰も知らないのに、自分たちだけが知っているワクワク感は研究開発の原動力です。

小川:確かに楽しさに勝るモチベーションはないかもしれませんね。今回は、当社がこれまで苦労して取り組んできた改善活動や技術開発の成果を、世界的な研究者である中西先生にお話できるということで、説明する社員も大いに刺激を受けたのだと思います。

中西:それから、自動車産業は国際的な競争の中で最先端をいかなくてはいけませんね。そういう意味では我々の研究も国際的に先端をいくかどうか、非常にシビアな努力が必要になります。そういう意味でも共通性を感じました。

5年という時間軸と発想の転換

小川 信也

小川:国際的に最先端を走り続けなくてはならないということですが、先生の研究室では、どのようなかたちで研究を進めておられるのでしょうか?

中西:大学の研究室は20~30名くらいで構成されています。研究員の大学院生は医学部の場合4年間在籍し、その後は他の研究室や外国にいくのが通例です。研究予算は、だいたい1年間に1億円程度を文部科学省から科学研究補助金としていただいています。これは5年間しか保証されません。ですから、4年目位で大きな成果を生み出し、それに基づいて次の5年間は、こういうテーマで研究をやるということを申請し、審査委員会で認められなくてはなりません。基礎研究といえども、短いタームでシビアに成果が求められ、それが10年20年のタイムスパンで大きな成果に結びつく必要があります。

小川:なるほど、逆に我々企業は結果が全てと思われがちですが、結果を生み出すためには、研究開発にしても人づくりにしても、中長期的な視野が重要です。当社の主要製品であるTPMS(タイヤ空気圧監視システム)は、初代の製品が完成する10年位前から自動車業界の中ではニーズがあり、研究をスタートしました。前半の5年である程度基礎技術を完成させ、後半の5年で周辺技術を開発している共同開発先と積み上げを行い、ようやく完成に至りました。この技術開発は早過ぎてもダメですし、遅かったらもっとダメですね。

中西:そうした時間的な視野の広さに加えて、着想の広さも重要ですね。先ほどの技術説明でお伺いした世界初のオールウレタンエンジンカバーは、材料からこだわって研究開発を進めたことで完成したと伺いました。

小川:このオールウレタンエンジンカバーの開発は、角度を変えてみるといろんな可能性があるという好例ですね。こうして開発した軽量化材料とウレタンフォームで、エンジンの振動や音を吸収しようと積極的に取り組んだ結果、世界初の製品となったわけです。

中西:我々の研究でも、全く違う発想で攻めると、今までとは全く違う結果が出てくることがあります。最大の成果と言われるタンパク質受容体の発見は、タンパク質自体の研究では全然うまくいかなかったのです。そこでタンパク質を生成する元となる遺伝子まで踏み込んで分析してみようと発想を転換した結果、一挙に解決しました。しかし、発想ややり方を変える時には勇気がいりますよ。成功するかどうかわからないですからね。

 
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